やお・よろず記

一昨日のことでした。

名東区障害者スポーツセンターで新しい講座が始まりました。
いつもやっている、声とことばの講座です。
「どんな人が来るのかな…？」。
一日目は特にルンルン気分で向かいます。

今回のこの講座は、視覚障がい者と健常者の交流の場という意味づけもあり、障がいを持った方も参加されます。

会場に入ると、白杖を持った青年がすでに一人座っていました。

「こんにちは」とあいさつを交わしたあと、他のスタッフさんとお話をしていると、その青年がスタッフさんの腕を借りながら、わたしの前まで来てくれました。

「ご挨拶をちゃんとしていなかったので…よろしくおねがいします」
「こちらこそ、よろしくおねがいします！」
「あの…ぼく、17年前に先生のラジオを聴いていたんです」

こういうことは、時々ですが、あります。

「まあ、ありがとうございます」
「よく送ったはがきを読んでいただきました」
「あら！そうなんですか！」
「ラジオネームもありました。“音楽三昧”といいます」
「ええっ！音楽三昧さん！」

その瞬間、「音楽三昧」というしっかりした筆跡と、文字の特徴まで記憶によみがえりました。

今、目の前に立つ青年は白杖を手にしています。

講座の始まるまでの短い時間に少しだけお話を聞きました。

わたしがNHK・FMの番組でパーソナリティをつとめていたころ、彼は高校に行けず引きこもり、ラジオへの投稿だけが社会との接点だったそうです。そこへ闘病が始まり、視力が徐々に失われてゆきました。わたしが担当する番組の最終日に送ってくれたはがきは、お姉さんに書いてもらったとのこと。

そして翌年、視力を完全に失います。絶望におそわれ、死ぬことばかり考えていた日々もあったそうです。

それから、いろいろ、いろいろあったことは、想像できます。

そして、しばらく住んでいた東京から、この春に実家のある名古屋に戻られたのだそうです。

何度かわたしのことをインターネットで調べてくれたそうですが、当時は本名で活動していたので、白樺八青という名前とはまったく結びつかなかったそうです。

この講座も、なんとなく申し込み、「講師はどんな人かな？」と講座の前日に調べたら、「歌時香（かじか）」というユニット名が出てきて、「もしや？！」と半信半疑で来てくれたそうです。

そして、第一声のあいさつで「やっぱり！」と確信したとのこと。

彼はいま、名古屋であらたなお仕事の準備しています。
名刺には、ダイバーシティコンサルタント「一人々の多様性が人材として活用される未来を創ります」とあります。彼の未来を応援したいと思っています。

それと同時に、ラジオネーム・音楽三昧の名のとおり、音楽活動も続けています。

わたぼうし大賞を受賞した曲。
作詞・作曲・ピアノが、彼、久保博揮くんです。

彼なりに普遍的な人間愛を書かれたそうですが、わたしにとっては17年の時の流れの中で、彼が生きてきた姿と重なり、思わず涙があふれてしまいました。ぜひお聴きください。

http://www.youtube.com/watch?v=64mfXQvrU14

長くなりますが、歌詞もあとに記しておきます。

「半分ごっこ」

自信がなくて
涙が出て
孤独を感じてしまうとき
逃げてしまいそうになる私

でもそのままでいいんだよって
背伸びしちゃダメだよって
やさしく叱ってくれたあなた

気休めでもよかった
背中を押してほしかった
この一歩を歩み出すために

だれもが完璧には生きられない
半分ずつ分け合って支え合う
あなたがくれたあたたかな気持ち
私もあなたにやさしくなれたら…

元気が出て
ただうれしくて
あなたがいとおしくなったとき
何も恩返しできない自分に気がつく

でもそのままでいいんだよって
いてくれるだけでいいって
やさしく笑ってくれたあなた

支えてあげたかった
背中を押してあげたかった
その一歩を歩み出すために
だれもが完璧には生きられない
半分ずつ分け合って支え合う
あなたがくれたあたたかさのように
私も誰かにやさしくなれたら…

きっと生まれてきたことに感謝して
素敵な日々が送れるのでしょう

だれもが完璧には生きられない
半分ずつ分け合って支え合う
あなたがくれたあたたかさのように
私も誰かにやさしくなれたら…

LaLaLa
それがきっとあなたへの
LaLaLa
お返しとなるでしょう