深呼吸の必要2007年06月01日 15時49分19秒

…というのは、
長田弘さんの詩集の題名。

13年前に世に出た詩集です。

深呼吸の必要。


実感します。



この、あまりにまぶしい季節を迎えると、

私はいつも、

呼吸が乱れてため息が多くなったり、
ふわーっと意識が遠のいたり、
胸がきゅんと苦しくなったり、します。

とくにゆうべのような満月になると、よけいに。

そう、4月、5月、6月と、
私にとっては、かなりエネルギーのいる時期でもあるのです。

だから、なおさら深呼吸が必要です。


教室で、まずさいしょに静かに静かに深呼吸を繰り返すのは、
なによりも自分のためなのです。




今朝、とつぜん「今日は木に会いに行こう!」と思い、

春日井の教室のあと、

東谷山(とうごくさん)フルーツパークへ寄りました。

でがけに忘れずカメラバッグを車に積んで…。



しだれ桜の季節は、たくさんの人が来るらしいけれど、

それを除けば、ウィークデーはほとんど人がいません。

木々の葉が、あさ緑から夏の濃い緑へ変わっていました。

まだ青いけれど、果実もたくさん実っていました。



花の写真を撮っていると、

胸の中を風が吹きすぎ、雲が流れてゆくように、

晴れ間から日が差してきます。



花の美しい色やかたちは、

誰のためのものでもなく、

ただただ、この星の上に存在するのですね。



ありがとう。

心でつぶやきながらシャッターを押します。



それから、樹下のベンチに座って風の音を聞きます。

どんな音楽よりも私の心をやさしくしてくれます。



深呼吸の必要。


実感しています。

祖母の着物を…2007年06月04日 22時40分36秒

今年の3月4日、
父方の祖母、正子おばちゃんが亡くなりました。

長いこと世田谷でひとり気丈に暮らしていましたが、

寄る年波には勝てず最近は八王子の老人施設に入っておりました。



叔母から電話をもらって間もなく、あっけなく旅立ったそうです。

自我が強く、自分の思い通りに生きたおばあちゃん。

眠っているようなきれいな顔だったそうです。

104歳。

誰が見たって、長生きです。




その祖母が大事にしていた着物を叔母が送ってよこしてくれました。

せっかくの形見とはいえ…、

小柄な祖母と私では着丈がぜんぜん合わないし、

どうしようと考えるうちに、

「舞台衣装にしよう」と思い立ちました。



ちょうど有松絞の開祖、
竹田庄九郎邸での朗読公演が決まっていました。

あそこで、この着物を使えたら、
着物好きなおばあちゃんはきっと喜ぶだろうな。

そんなことを思いながら。



荻野智美さんにお任せしました。

彼女らしい大胆な発想で、

まったくハサミを入れずに、まったく違うものに変身させてくれました。



これを見たらお客様…驚くだろうなあ…。ふふふ。

おばあちゃんも楽しんでくれるだろうなあ…。



6月10日、その衣装で「伊勢物語」を
これまた大胆な現代語訳も加えて朗読します。

現役高校生と…2007年06月08日 13時36分37秒

日曜の竹田邸「伊勢物語」の二日後、

6月12日には、愛知県立春日井西高校での公演です。



これまで、3回打ち合わせに行って参りました。

音楽鑑賞会などで学校のお仕事はかなりやっているけれど、

こんなに打ち合わせに行ったのは初めてです。

内容は…、朗読です。

読むものは、まったく違うタイプの詩5編と、

国語の教科書に載っている山田詠美の「ひよこの眼」。

それから「千の風になって」。

“詠美”と“千の風…”は、リクエストにお応えしました。



詠美の小品は、なかなかです。

先生が、授業のたびに泣いてしまうとのことで、

その先生のピュアさに惚れて読もうと決めました。



朗読は奥が深く、

幅が広く、

読む空間が生かせ、

お客様の年齢やタイプを考慮でき、

衣装もそれぞれ考え…、

そんなふうに変化に富んでいて、

楽しいです。




今回の春日井西高校は吹奏楽部が活躍しているとのことで、

先生のご提案に応えて、吹奏楽部の数人の子たちに、

ほぼ即興で私の朗読に音を入れてもらいます。

高校生に「即興」を要求するのもどうなの、と心配の声もありますが、

そこは、なにごとも信頼関係です。



 「私は、みんなを信じています。

  どんな音が入っても私はひるみません。(ホント?!)

  それどころか、音によって私の朗読は導かれ、

  一人では読めない何かを

  きっと引き出してもらえると思うからね。

  楽しみにしてるね!!」


そう言い残して学校を後にしました。

ちょっとカッコよ過ぎ?!



さてさて、来週の火曜日、本当にどうなるんでしょう??

心から楽しみなのであります!



ちなみに、この朗読会、外部の方も入れます。

時間は…平日ですが…学校の行事なので午後3時半頃から。

場所は、本館2階の被服室です。

※体育館じゃないので、間違わないでね!

そういうものなんだ…2007年06月17日 00時36分48秒

「あなたのことを思い出さない日はありません。」


どこかで耳にしたことのあることば。

使い古された感さえあることば。

親が子に贈る言葉。


「なんか大げさなだあ」と思っていたけど、

いえいえ、本当にそうなんですね。


2年前に遠くの大学へ進み、家を出た息子のことも、

春から自立した娘のことも、

一日たりとも忘れたことはありません。

今になって「ああ、親ってそういうものなんだ」と痛感しています。



それどころか、

日が経つにつれ、なにかにつけて、

「これ、あの子に見せたいなあ」とか、

「あの子だったらなんて言うかな」とか。



まるきり力不足の親だけど、

こういうときには、ふつうの親の顔しているのが、

妙に笑えます。



遠い昔に死んじゃった父も、

きっとそんな思いで、

どこかからハラハラしながら私を見てくれているのかな…。


一キロも離れていないところにひとりで住む母も、

そんなふうに私のことを思ってくれていているんだろうな…。



子を持って知るなんとやら…。

親の心のなんたるかが、少しだけ見えてきたような気がしました。

サヨナラ、あきらさん2007年06月28日 07時29分46秒

あなたとは、ずいぶんお会い出来ずにいました。

もういちど、あなたのギターの音色と、歌声を聴きたいと願っていました。

それもかなわないことになってしまいました。

愚図な私にも泣きたくなります。




夜遅くお別れに行った会場には、

まだまだ仲間が帰る気配もなく、

みんな泣きながら笑っていました。

あなたのことを話していると、ついつい笑顔が生まれるんですね。



ひまわりの花に囲まれてあなたは眠っていました。




つい先日のこと、まさに命がけで上京し実現した、

あの東京のステージで着た青い作務衣で横たわるあなたは、

すぐにも起きあがって、

近くに並んでるギターを手に歌い始めそうでした。



東京から名古屋へ来てまだ4年だったんですね。



きっと東京でも名古屋でもたくさんの仲間を愛し、

仲間に愛された人だったのでしょう…。



みんなにやさしい言葉をかけ、

やさしい気持ちにして、

元気をいっぱい振りまいて、

やることぜんぶやって、

早々と旅立ってしまったんですね。



あの仲間たちに比べたら、

ほんの少しの縁かも知れないけれど、

あなたと出会えたこと、

あなたがいてくれたこと、

あなたのくれた言葉に感謝します。



さよなら

あきらさん。

またいつかどこかで再会したら、必ず万障繰り合わせて、

あなたのギターと歌声を聴きます。


 加藤あきらさん

 享年 52歳

 2007年6月25日深夜に逝去

最期にきこえてくる音~ことば2007年06月30日 01時04分03秒

ある日、教室で、
いつものように目をつむってゆっくり呼吸をしていたら、
気にもかけなかった音がどんどん鮮明にきこえてきて、
ふと思いました。


人間は死の淵まで聴覚だけは働いていると言います。

たとえ昏睡状態になっても、
周りの音は耳に届いていると言います。

そういうたぐいの話は何度も聞き、
頭では理解していたはずなのですが…。



目をつむって静かに息をしていたら、
急にリアルに感じたのです。

私の人生が、これで最期というとき、
目を開くことも出来ない、
声を出すことも出来ない、
そんなときになって、
ただただ、
受け身の中で、
どんな音~声、がきこえてくるんだろう…って。



「いままでありがとう」

  「あら まだ生きてるよ」

    「愛してるよー」

      「死なないで」

「葬式どうするの」

  「早く死んじゃえ」

「あなたに逢えてよかったよ」

    「あとから行くからね」

     「遺言状ってあるの」

  「………(無言)…」
 
 「ご臨終です…」

    「よい旅を…」


みんな、いろいろな音や声を聴きながら旅立っていくんでしょうね。

そして誰もが、最後の瞬間くらいは、
「愛されていたんだ!」と確信できる言葉を背に、
旅立っていきたいでしょうね…。